コラム

フードアレルギーと片頭痛

増加傾向にあるアレルギー疾患

近年、花粉症や蕁麻疹などのアレルギー疾患は増加傾向にあります。

これらはアレルゲンと呼ばれる反応物質が体内に入ることで、極短時間で反応を示すいわゆるIgE即時型アレルギーです。

そのアレルゲンとしてスギ、ヒノキの花粉やハウスダト、猫や犬などの動物に対するものなどが比較的多くみられます。

また食物の中でも蕎麦やピーナッツなどは以前から言われているようにアレルゲンとなる可能性が高いものです。

最近では通常問題ないと思われているトマトやキュウリなどの野菜でも即時型アレルギー反応がみられる人が増えてきています。

アナフィラキシーショック

即時型反応は軽度であれば痒みや湿疹などの症状が現れますが、重度の場合は血圧が下がりショックとなるようなアナフィラキシーという重篤な状態を招くことがあり注意が必要です。

遅延型アレルギーと片頭痛の関係

食物アレルギー反応において、近年IgG遅延型アレルギーが様々な状態に関わっていると報告がみられています。

これは文字通り反応が遅いタイプのアレルギー反応です。

食物を摂取して数時間から数日くらいで起こる反応ですが、毎日摂取しているものや消化のしにくいものはこのアレルギー反応を起こしやすくなります。

小麦などの穀類に多く含まれるグルテンなどがその筆頭であり、乳製品に含まれるカゼインもその一つです。

食物に関しては現在120項目の反応を調べることができます。

片頭痛でもこの遅延型食物アレルギーとの関連を調べた研究があります。

これによると56人の片頭痛を持っている人と片頭痛を持たない56人で遅延型食物アレルギーを調べたところ片頭痛を持っている人では100%、持っていない人では21%に何らかの食物にアレルゲンとしての反応がみられ、6ヶ月間の陽性食物の除去によって56人中43人で片頭痛発作が消失、4人が改善、9人が変化なしでありました。

また別の研究でもアレルゲン除去食で片頭痛持ちの人の半数で頭痛の起こる回数が少なくとも30%は減少したとの報告がみられます。

食物アレルゲンと片頭痛との関連が示唆される

それぞれのアレルゲンとなる食物そのものが片頭痛を誘発しているかどうかは定かではありませんが、可能性のある食物を除去することは片頭痛の予防に効果的であるとは言えるのではないでしょうか。

遅延型食物アレルギーではアレルゲンにより腸粘膜の刺激、炎症を引き起こし腸管細胞間のタイトジャンクションが損傷されることによりそのアレルゲンや細菌の体内侵入による直接的な影響、また腸管炎症による栄養素の消化・吸収の阻害などが問題となると言われています。

これらのアレルゲンとなっている食物を除去することが腸粘膜の刺激、炎症を抑え腸管粘膜のタイトジャンクションの修復されたことで糖の吸収機構が安定化し急激な血糖の上昇が改善されたこと、また栄養素の吸収阻害の観点からは鉄の吸収機構の改善したことが頭痛の軽減につながっていると考えられます。

参考文献

  • Food allergy mediated by IgG antibodies associated with migraine in adults. Rev Alerg Mex. 2007 Sep-Oct;54(5):162-8.
  • Diet restriction in migraine, based on IgG against foods: a clinical double-blindとでrandomised, cross-over trial. Cephalalgia. 2010 Jul;30(7):829-37.