コラム

頭痛は首から

多くの皆さんが悩んでいる慢性頭痛はお薬頼みであることが殆どでしょう。

それでもお薬は万能ではなく、むしろ効果が薄く飲まないよりは良いから・・・と続けている方が多くいらっしゃると思います。

慢性的な頭痛には複数の原因がある

まずお伝えしたいことは、慢性的な頭痛は単独の病態ではないということです。

軽度の頭痛であれば鎮痛剤を飲んで改善するとそのまま放置してしまうことが多いのではないかと思いますが、酷くなると薬は効きません。

頭痛だけが強調されがちですが、それと同時に疲労感、不眠、めまい感、不安感、動悸など様々な症状を自覚している人が殆どではないでしょうか?

私がこれまで診てきた頭痛の患者さんには多くの隠れた問題があります。これらを下に示します。

慢性頭痛の分類

多くみられる慢性頭痛は以下のように分類され、それぞれ違った治療のアプローチとなることが殆どです。

  • 片頭痛
  • 緊張型頭痛(筋収縮性)
  • 群発頭痛
  • 後頭神経痛など

「片頭痛にはこのお薬を飲みましょう。」と指導されることもあると思いますが、自分でこれが片頭痛なのか?肩こりからの頭痛なのかわからないことも多いのではないでしょうか?

首の状態

私が頭痛の患者さんの診察で必ず確認するのは首の状態です。

ほとんどの頭痛の患者さん、特に慢性頭痛の方にはタイプに限らず共通の問題が存在します。それが「首こり」です。

緊張型頭痛などは原因として「肩こり」が挙げられていますが、「首こり」と「肩こり」は混同されやすいものですが実は違うものです。

後に詳しく説明(→ 首こりと肩こりの違い)しますが、解剖学的、病態的にもこの二つは異なります。

首の問題からの頭痛というと、頭痛の国際分類第3版(ICHD-3)では二次性性頭痛の中の「頚原性頭痛」に分類されています。

「頚原性頭痛」の定義としては、側頭部固定痛、頚筋への指圧や頭部を動かすことにより発症する頭痛、後頭部から前頭部への放散痛があるなどとされています。

しかしながら、図のように「片頭痛」、「緊張型頭痛」、「頚原性頭痛」はオーバーラップした部分を含んでおり鑑別が難しい場合が少なくありません。

頭痛3タイプの病態

実は肩こりと関連のあると言われる「緊張型頭痛」や「片頭痛」の診断を受けている方の殆どに首こりがあります。

後頚部筋群に圧痛を認めるのです。このような状態は患者さん自身殆ど自覚していません。

これが現状で頭痛の治療を難しくしている要因であると考えられます。

これまで頭痛診療を受けてきた皆さんは後頚部の診察(触診)をされたことはあるでしょうか?

首こりはどう影響する?

片頭痛は脳過敏の状態と言われます。

これは三叉神経が過剰に興奮している状態です。

つまり様々な誘因・増悪因子に影響を受けやすい状態になっているということです。

頭痛診療のガイドラインでは、片頭痛の誘発・増悪因子に関して

  • 精神的因子:ストレス、ストレスからの解放、疲れ、睡眠の過不足
  • 内因性因子:月経周期
  • 環境因子:天候の変化、温度差、におい、音、光
  • ライフスタイル因子:運動、欠食、性的行動、旅行
  • 食事因子:空腹、脱水、アルコール、特定の食品

など様々なものが挙げられています。

これらの誘因・増悪因子に影響を受けやすい状態にしている原因が「首こり」と考えられます。

参考データ

ここで近年増えている片頭痛に関する報告をご紹介します。

91名の単発片頭痛の人と34名の慢性片頭痛の人での研究

後頚部痛がある人においては7.6倍慢性片頭痛に移行する危険性が高い

Comparison between neck pain disability and cervical range of motion in patients with episodic and chronic migraine: a cross-sectional study. J Manipulative Physiol Ther. 2014 Nov-Dec;37(9):641-6.

487人の片頭痛患者の頭痛出現前後にわたって付随する症状を調べた研究

約70%が頭痛出現の前後に首の痛みを自覚。また約54%が片頭痛の始まるのと同時期であり、そのグループでは約68%が片側の首の痛みであった

Neck pain in episodic migraine: premonitory symptom or part of the attack? J Headache Pain (2015) 16:80

797人の患者で頭痛と首の痛みの関連性を調べた研究

一年間の追跡で首の痛みを伴った頭痛は85.7%でみられ、片頭痛と緊張型頭痛の両方を持ったグループでは89.3%、緊張型のみでは88.4%、片頭痛単独グループでも76.2%と首の痛みと頭痛との関連が明らかに示された。

Prevalence of neck pain in migraine and tension-type headache: a population study. Cephalagia 2015:35(3); 211-219.

首こりと片頭痛の関係についてのレビュー

上記以外にも片頭痛と首の痛みや機能障害との関連を示唆する多くの論文が出されています。
それらをレビューとして論文にまとめました。

Aoyama N. Involvement of cervical disability in migraine: a literature review British Journal of Pain, vol. 15, 2: pp. 199-212. , First Published May 31, 2020.

頭痛を訴える人の殆どが後頚部の筋緊張(首こり)が存在します。首こりが強ければ服用する薬の効きも悪くなります。

首こりを緩和させることがこれらの病態の改善、治療につながるのです。