コラム

片頭痛の起こり方

  1. 首のコリ・筋肉の緊張(頚髄神経への刺激)
  2. 頚髄神経の興奮が三叉神経を刺激
  3. 脳過敏の状態(三叉神経の興奮)
  4. 片頭痛が起きる
  5. 痛みの抑えがきかない

脳過敏

片頭痛の人は脳が過敏な状態であると言われています。

その過敏な状態があるために頭痛が起こりやすいのです。

では、その脳過敏は突然起こるのでしょうか?

それを誘発しているものは首に存在することが考えられます。

解剖学的にもそれを裏付ける神経連絡もありますし、私自身の頭痛の経験や多くの患者さんの診察に携わってきた経験からもこれは殆どの患者さんに共通することであると思われます。

ですから、頭痛の治療に関しては脳過敏の状態を改善させることが重要ですが、その誘因となっている根本的な原因の対策もかなり重要な要素なのです。

片頭痛治療のアプローチ

これまでの解説から片頭痛には様々な要素があることがお分かりと思います。

そのため片頭痛の鎮痛剤の服用だけでは根本的な改善には繋がらないのです。

それぞれの要素はそれぞれの方々によって異なります。また同じ方であっても、毎回同じ状態ではありません。

1)首こりの要素がどうなのか?

これは基本的にはほとんどの方に見られる問題です。

首の緊張を緩和させることで頭痛の緩和、メンタルの安定がもたらされます。
筋肉の緊張をきたす要素は姿勢、目を使いすぎること、噛み合わせなどが大きな要因ですが、内面的には低血糖や鉄欠乏が深く関わります。

これらに関しては血糖検査や血液検査などでの評価になりますが、頭痛の予防としては非常に重要になります。

2)後頚部からの刺激が頚髄神経を介して三叉神経を刺激しています。

頭痛が続いている人は脳過敏の状態にあります。過敏な状態を抑えてあげることも治療の一つになります。
これに対しては本年、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(抗CGRP)抗体薬やその受容体に対する抗体薬が日本でも認可されました。

抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(抗CGRP)抗体薬 (エムガルデイ、アビジョ)、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(抗CGRP)受容体抗体薬 (アイモビーグ)について

日本初の抗CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)抗体薬であるガルカネズマブ(商品名 エムガルティ)が発売され、それに続き、他の抗CGRP抗体薬のフレマネズマブ(商品名 アビジョ)や受容体抗体薬であるエレヌマブ(商品名 アイモビーグ)が発売されました。

CGRPは片頭痛の痛みのもとになる三叉神経節や三叉神経の分布する硬膜や血管壁に多く存在する末梢性感覚神経伝達物質として知られています。

CGRP自体が血管を拡張させるため、片頭痛ではセロトニンと並ぶ片頭痛の原因物質として比較的古くから研究されてきました。

清水利彦:Introduction on CGRP and its role in migraine pathophysiology. 日本頭痛学会誌46:171-172,2019

3)片頭痛が起きている時は鎮痛剤(トリプタン製剤)が使われます。

典型的な片頭痛の発作であるのか、緊張型の要素があるのか・・・頭痛ダイアリーなどを使用しながら使用することになりますが、服用するタイミングによっても効果に差が出ることがあります。

また、実はこれらの鎮痛剤は首こりが強い状況では効果が期待できないことが多いのです。

4)痛みが慢性的になっている時は自ら痛みを抑えるための神経経路(下降性疼痛抑制系)の活動が低下していることがほとんどです。

薬剤に依存がみられる場合は特にその状態であります。

このように片頭痛に対してのアプローチは多方向から考える必要があり、それらをうまく組み合わせることで予防や治療が可能になります。